今回の住所登録の義務化については、当初の方針を最終的に撤回するという、大幅な方針転換を行う結果となりました。また、11月1日の発表以降、皆様の混乱を招き、はてな全体の雰囲気が変化するほどの大きな問題となりました。
この様な異例の事態を招いた要因は、はてなの、種々の問題に関する認識や取り組み不足が最大の原因であったと考えています。
一方、住所登録の方針発表以降、パブリックコメントなど多数の貴重なご意見を頂いたり、各分野の専門家にも積極的に意見を求める中で、当初の認識になかったご意見を伺うことができました。
以下、今回の住所登録に関連する主な論点それぞれについて、主な意見の概要と、はてなでの検討内容をご報告します。
法的解釈について
- 今回はてなで住所登録を義務化する必要があると判断した根拠は、「ユーザーの正確な氏名や住所を確認しない場合、違法情報が登録された際などにはてなが法的責任を負う可能性がある」というものでした。
- この問題については、はてな内外のブログなどで法律専門家の間でも議論が起こり、様々な見解があることが分かりました。
- はてなが当初考えたように、過去の判例などから、違法行為を行うユーザーの十分な本人確認を怠った場合に、ブログ事業者が違法行為を教唆・幇助したとされる可能性があるとする意見がありました。
- 一方で、プロバイダ責任法上、サービス提供者は違法な情報を具体的に認識できてから責任が発生するのであり、現状のはてなのサービスで「主体性」が認定されるとは考え難く、判例の解釈は間違っているというご意見がありました。
はてなの対策・見解
個人情報の用途について
- 住所や氏名情報の用途が不明確であるとのご指摘を頂きました。
- はてなの業務提携先企業に、住所や氏名が提供されるのではないかというご質問を頂きました。
はてなの対策・見解
- お預かりした個人情報の利用目的をより明確にし、プライバシーポリシーに記述しました。また、「はてな個人情報用途表」を同時に公開し、業務提携先に開示を行う項目などを具体的に公表しました。
- 質問の多かった特定企業との業務提携内容については、個人情報のやりとりを伴うものではない旨のご説明を行いました。
セキュリティ対策について
- 住所という重大な個人情報を管理するにあたり、はてなの情報管理体制に対する質問やご意見を多数頂きました。
- 昨今個人情報漏洩事件が増加しており、漏洩に対する不安感のご指摘を頂きました。
- プライバシーマークの取得を行ってから住所登録を行うべきであるというご意見を頂きました。
- はてなのシステム上、cookieやパスワード確認などの認証システムを改善し、より安全性の高いものにするべきであるとのご意見を頂きました。
はてなの対策・見解
表現の自由について
- 個人情報の開示条件についてのご質問がありました。特に、警察署からの照会が行われた場合の開示に関するご質問が複数ありました。
- 削除申立があった際にまずプライベート化する方法について、管理者の強権に対する危機感や、言論空間が殺伐とするのではないかという意見がありました。
- 必要な担保を預けることで、自由な言論を保証して欲しいという意見がありました。
- 半匿名だからこそ日記に書けることがあるという意見がありました。
はてなの対策・見解
- 警察からの照会など法的拘束力がないものについては開示条件から外し、プライバシーポリシーを変更しました。
- 犯罪捜査への協力など、任意の情報開示を主体的に行う場合は、生命、身体、財産に対する差し迫った危険性がある場合や、当社の権利、財産やサービス等を保護するため必要と認められる場合といった他の開示条件項目で補えると判断しました
- インターネット上のハンドル名による活動から生み出される言論に一定の価値があることは確かであり、これを一概に否定することはできないと考えます。表現の自由は最大限保証されるべきですが、はてなが必要以上に責任を負うこともできないと考えます。
- はてな内の削除基準を明確化し、より広く告知を行い、ユーザーや第三者の批判を受けられる体制としながら、基準にのっとりより迅速に発信者への照会、プライベート化、削除等の措置を行っていきます。